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大阪の葬儀事情

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 悲しみに暮れているだけでは済まないお葬式、いざという時に困らず、慌てないように日頃から心掛けておくのがお葬式。でも、なかなかその時にならないと手を付けられないのもお葬式ですね。そんなあなたのために、この記事がきっと役に立ちますよ。

コンテンツ

大阪独特のお葬式の豆知識

 ここでは、大阪に限ったお葬式の風習や、大阪の風土が生み出したお葬式の傾向をご紹介しましょう。

お骨上げ

 大阪ではお骨上げの際に、容器が2つ用意されます。のど仏のお骨を納める小さな骨箱(本骨又は心骨とも呼ばれます)と、それ以外のお骨(胴骨)を納める高さ15㎝程度の骨箱です。これだけでは、全てのお骨を納めきれないと、他府県の方は不思議に思われるようですが、関西では、ご遺族から「本骨だけでいい」と云われることも増えてきています。葬儀の専門家の見解では、関西には各宗派の本山が集中していることが関係していると云われています。特に大阪はその中心に位置して、浄土真宗・浄土宗は京都、真言宗は和歌山、天台宗は滋賀県、と云った具合です。昔、お骨の一部をご自分の宗派の本山に納めに行ったのは、お骨になっても「宗祖のおそばにいたい」と云う信仰心の現れでした。その名残として、本骨と胴骨と云った2つに分かれた収骨スタイルになったと思われます。お釈迦様のお骨は「仏舎利」として、世界中に分骨されて安置されているわけですから、大阪の収骨スタイルが変わっているとは言えないように思います。

大阪の火葬場事情

火葬場の数

 大阪市内には市営の火葬場(平野区―瓜破斎場、北区―北斎場、大正区―小林斎場、鶴見区―鶴見斎場、西淀川区―佃斎場)の5か所があります。東京では民間の火葬場が非常にたくさんあり、それぞれに一長一短があるようです。例えば、公営は料金が安いかわりに、役所仕事の常として、融通が利かない。民営は利用する方々の立場に立った施設、対応で評判が良いようですが、その分費用も高くなります。火葬炉にもランクを設け、大阪では考えられない高価なものもあるようです。

稼働日

 他地域や大阪以外では、友引の日に火葬場が休みの場合が多いようですが、大阪市内の火葬場では元日を除いて、年間364日間稼働しています。尚、葬儀社は元日にお通夜が可能なので、年中請け合えるわけです。元日以外は毎日、午前11時から午後4時まで火葬が行われます。大阪では、朝一番のお葬式が午前10時~11時、最終が午後3時~4時というのが一般的ですが、高齢化が進む現代においては、大都市大阪の場合、火葬の希望日が先約で埋まってしまって、2・3日の日延べが当たり前になるのも、そう遠くはない話かもしれません。

大阪市内の葬儀は「半出し」が多い

 火葬場の予約は、出棺時間からとなっており、その予約時間から30以内に到着しなければなりません。例えば、11時火葬予約の場合、11時30分までに到着と定められています。火葬場の数が少ないせいで、遠くの火葬場へ行く場合は、片道30分以上かかる地域からのご出棺では、途中の渋滞や不測の事態で遅刻と云うことも心配されます。そこで、11時予約の場合は、30分繰り上げて9時半から10時半のお葬式を設定するのです。そうすれば、60分の時間があるので、慌てず余裕をもって到着出来ることになります。

精進落とし

 精進落しは本来、四十九日の法要(満中陰法要)のあとに、召し上がるものです。人が亡くなると、忌明け(四十九日)まで魚肉類の食事を断って、忌明け後に初めて精進料理以外のものを食べて、日常生活に戻ると云うことを意味していました。今では、ご葬儀でお世話になった方々への感謝・労をねぎらう意味が大きくなっています。これは世間一般で広く認知されていますが、大阪ではその上を行く合理的な手法があります。
大阪市内の葬儀の流れでは、火葬場で故人とお別れすると、ほとんどの方は式場に戻ります。収骨までに2時間ほどあるわけですが、市内の火葬場には待合スペースはあっても、設備が充実していない上、飲食物の持ち込みが禁止されていて、とても時間がもたないからです。そこで、その2時間余りを利用して、精進落しを済ませることが習慣化しました。その結果、2度火葬場へ行くわけですが、全ての行事の終了する時間は早くなります。 凡そ11時からのご葬儀なら4時ごろには終了となります。また、最近は火葬場付近に仏事専門の料理店も見かけられるので、それらを利用すれば式場まで帰る必要もなく、故人との想い出などで、もっと有効に時を過ごせるようになってきました。

雰囲気

 昭和の初め、大阪に火葬場が登場した頃、職員は全員サングラスをかけていたそうです。これは、火葬執行のボタンを押す時に素顔が判って、故人やご遺族に恨まれることを恐れたせいだとも云われています。尚、どこの火葬場でも写真撮影は禁止されています。

大阪の香典事情

 香典の歴史から:昔は「香奠」と書かれ、亡くなった方に「香を供える」と言う意味でした。だから、お香を買う代金として、「香典」、「香資」、「香料」と書くようになりました。室町時代の武士は金銭で香奠を出した記録が残っていますが、農村部では香奠として、長く米などの食料を持ち寄っていたものでした。その後、明治になると都市部では金銭による香奠が一般的になり、大正・昭和初期には地方でも、金銭香奠に移行し始めました。葬儀を出すことは、近隣の方々に協力頂く分、食事などの振る舞いをしなければならず、多額の出費を必要としました。「葬儀も出せない」と云う事態を考え、相互扶助としての香典の意味合いは強いものであったことが、お判り頂けますね。
ところが、現代では社会全体が豊かになり、相互扶助としての香典の意味がなくなり、反って、「香典返し」の煩わしさから解放されたいと思う人が増えてきました。今では、10人中7人の方が、「香典辞退」の意向を示されるようです。その理由としては、「お返しが大変」「香典袋に宛名が書いてないと、調べるのが大変」など、過去の大変な経験が基になっているようです。お葬式のあとは、手続きごとや満中陰の準備などで大わらわなのに、お返しのために住所録を作ったり、品物を選んだりと、その手間と気遣いは大変ですものね。
香典辞退に関しては、あなたの考え方次第で進められて良いと思いますが、ここで一つ注意して頂きたいのは、供花や蜜、盛り篭などについてのお返しです。これらについても、相手の方は当然お金を出しているわけですから、香典と同じような考えで進める必要があります。企業の場合は意味合いが違うでしょうが、個人葬の場合は意思統一された方がよいでしょう。

樒(しきび)

 関西のお葬式の会場に行って、一番最初に目が入ってくるのが、高くそびえ立って並んでいる葉っぱだけの飾り物。そう、それが「しきび」、でも漢字変換では出ないかもしれません、全国的には「しきみ」と呼ばれています。関西人にとっては意外ですが、他府県の方にとっては、「何でしょう、これ?」と思われているようです。調べてみると、大阪、奈良、兵庫、京都、和歌山、滋賀、愛知、三重(一部を除く)の各県では一般的ですが、他地域では花輪がほとんどのようです。
しきびは、もくれん科の常緑樹でその枝や樹皮から独特の香りが漂い、実や花には有毒物が含まれています。死者の近くやお墓に供えると悪霊が退散し、死臭を清めるとして、別名「仏前草」とも呼ばれています。その香りは香を焚くのと同じで、仏壇にもよく飾られています。かつてはお葬式と云えば、自宅で行われることが多かったので、玄関口には「悪霊退散」、「死臭を清める」などの意味から、このしきびを立てていました。たぶん、大昔火葬場もなく土葬だったので、野犬がお墓を掘り起こさないように、しきびを敷き詰めていたのが、いつ頃からか、野犬を悪霊にたとえて、お葬式の必需品になったのではないでしょうか。でも最近は、地域の集会所や葬儀会館でお葬式を行います。その規約の中には表飾り禁止というのが多いようです。ですから、あの大きなしきびは立てられなくなったということです。そういった中で考え出されたのが、しきびに代わる物として、「板しきび」「紙しきび」なるものが、主に新興住宅地から流行り、今では大阪の至る所で見かけるようになりました。

韓流のお葬式

 大阪市内でも生野区という地域は、特に在日韓国・朝鮮人の方が多い町として有名です。数十年前では、在日の方が亡くなられると故郷のお墓に埋葬を希望される方がほとんどでした。あちらは土葬だったので、日本で棺を梱包し、お通夜を行った後、予約日に空輸して母国で葬送するのが、生野区では当たり前のように行われてきました。日本と韓国・朝鮮では食べ物や風習も異なるので、葬儀スタイルや考え方も違っています。韓国や朝鮮は儒教の国でしたので、在日の方も儒教のしきたりや習慣を日常生活に取り入れているので、お葬式や法事にも儒教のしきたりや作法で行われます。

【日本の作法との主な相違点】
・病院で亡くなっても、家には連れて帰らない。
・納棺の時に着せる衣装が異なる。
・納棺の時に準備するものが異なる。
・お供え物が異なる。
・祭壇前にテーブルを置き、朝晩親族が集まって一人ずつ故人にお酒を捧げます。
・全ての弔問客に食事を振舞います。(大阪では通夜振る舞いをしないのが一般的になってきていて、焼香後はすぐに帰ります。)
・遺骨は家に安置しないで、お墓に埋葬するまで、お寺などに安置します。
・1年を通じて法事の回数が大変多いです。

最近の傾向

 ライフスタイルの多様化に伴って、葬式も多様化が進んでいます。そんな最近の葬儀スタイルをご紹介しましょう。

最近の葬式に多いスタイル

 以前は、親族や友人、近所の方々等、故人にゆかりのある方を呼んで行うのが一般的でした。でも最近は「家族葬」「直葬」と呼ばれるスタイルが好まれる傾向にあります。
「家族葬」は、文字通り親族だけで行う葬式のことで、故人に近しい方だけで偲ぶ時間を長くとりたいと云う考えが多くなって、家族葬を選ぶ方が増えています。この場合、親しかった友人や近所の方のために、別に改めて「お別れの会」などを開くケースもあるようです。「直葬」は通夜・葬式などを行わず、火葬のみ行うものです。独身や親族・知人が少なく、費用をかけたくない、形式にとらわれたくないなどの理由で直葬を選ぶこともあります。でも、参列者からすると、「なぜ最後に呼んでくれなかった」と云ったトラブルも見られるので、誰を呼ぶかは、生前に話し合って決めておく必要があるでしょう。

エンディングノートの作成

 「終活」が話題にのぼるこの頃、自分の生きてきた記録や遺される方に伝えたい事を纏めて、「エンディングノート」に遺す方が増えています。エンディングノート自体には遺言書と違って、法的効力はありませんが、他の人とは話し辛い「自分の死について」などを伝える手段として活用されています。例えば、「もし重病で会話が難しい状態になったら、自宅で療養したい」、「自分の葬儀には誰々を呼んでほしい」などと云ったことも、書き残すことが出来ます。日記感覚で記せば、遺された方にとってはいつまでも、あなたの記憶を残す宝物になることでしょう。

いざという時に備えて、4つのポイント

① 喪主の決定

 喪主は遺族の代表で、最終的決定権を持つ責任者になります。葬儀にあたっては、葬儀の形式や日程、費用などいろんな事を決定する必要があるので、まずは喪主を決めておくことでその後のことがスムーズに運びます。基本的には故人の配偶者又は長男など、血縁の近い方が担いますが、遺言で指定されていれば、それに従って喪主を決定する方が良いでしょう。

② 葬儀のプランは?

 本人や喪主だけで決めずに、親戚や関わりの強い方々の意見も踏まえて、その規模や費用、場所などを予め決めておくと良いでしょう。葬儀プランは。「会葬者をどのくらい招くか」を基準に考えます。例えば、30名程度であれば、家族葬で十分でしょう。これで、式場の規模や日数、料理の数などが決まって、総費用の概算が判ってきます。

③ ご遺体の安置場所は?

 臨終後24時間は火葬が出来ないので、遺体安置の場所を決めておく必要があります。一般的には自宅か、葬儀社の遺体安置所などを利用しますが、病院で亡くなった場合は、すぐに搬送する必要があるので、事前に決めておく方が良いですよ。尚、自宅安置を検討する場合は、エレベーターや階段などの共用部が狭いこともあるので、十分広さがあることを確認しておきましょう。

④ 宗教、宗旨宗派の確認は大事です

 読経でお坊さんを呼ぶ場合は、故人の宗教・宗派に合わせる必要があります。菩提寺がある場合は、菩提寺の住職・僧侶に葬儀のお勤めをお願いするので、僧侶の予定を確認して、葬儀の日程を決める必要があります。

いかがでしたか、
いざという時に困ったり、慌てないように日頃から心掛けておく、お葬式のポイント。
是非、参考にしてみてください。

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