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お布施についての疑問にお答えします!

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 日頃、あまりお寺さんとお付き合いすることのなくなった私たちにとって、いざと云う時に判り難いのが、お布施についての疑問ではないですか。そんなあなたに、お布施の意味から、マナー、そして一番肝心な相場まで、ズバリとお答えします。

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お布施

 今ではお布施と云えば、僧侶に読経や戒名を頂いた謝礼として、それ相当の金額を渡すのが当たり前になっています。本尊へお供えすると云う意味から、読経や戒名の対価ではないと云って、読経料や戒名料と云った言葉は使わないこだわりだけが残っています。

布施の本来の意味

 布施とは仏教の修業法「六波羅蜜(ろくはらみつ)」の一つに入っています。六波羅蜜は6つの徳目の総称を云い、この徳目である6項目を実践すれば、煩悩が消えて悟りの世界に到達できると、お釈迦様が教えられています。これらはお坊さんだけの修業法ではなく、全ての人々にとっても、大切な教訓であると云えます。

6つの徳目

  1. 布施:人に施しを与えること。
  2. 持戒:戒律※を守り、省みること。
    ※戒律-元々は仏の戒めを自発的に守る=戒、僧団として守る規則の中で罰則付きのもの=律、として僧侶が悪いことをしたり、世間から非難されるような行為を禁止したものでしたが、一般的には信者が信仰生活で守るべき規則のことを指し、今では、仏教以外の宗教においても、使用される言葉になっています。
  3. 精進:常に努力すること。
  4. 忍辱:苦しくても耐えること。
  5. 禅譲:心を落ち着かせて、安定した状態で自己反省すること。
  6. 智慧:正しい判断力で、物事の真実を見る目を持つこと。

布施の3種類の意味

  1. 財施:「もったいないと思う心・むさぼる心・惜しむ心・恩に着せる心」を起こさないように、金銭・衣服・食料などを施すことです。
  2. 法施:物質やお金ではなく、お釈迦様の教えを説いたり、他人のために読経することです。
  3. 無為施:いろんな恐怖や不安などを取り除いて、安穏な心を与える=畏怖を取り除くと云う意味です。

 ですから、葬儀や法要で僧侶に渡すお布施は、「財施」にあたり、僧侶が読経や故人の供養で祈るのは、「法施」を人々に与えていることになるのです。

法施の役割には3つがあり、

  1. 仏や宗祖の教えを人々に伝えること。
  2. ご先祖様が安穏であるように読経・唱題を行って、祈ること。
  3. 生きている人々の平穏無事を祈って、読経・唱題すること。

以上の3つがお寺の役目とされています。

布施と檀家の関係

 布施のことは梵語で「ダーナパティ」と云い、それの音写が「檀那(だんな)」で、施しや布施を意味します。檀家が所属する寺を檀那寺、または菩提寺と呼んでいます。経済的に金銭や衣食でお寺を支えている人を檀徒、その家族・家を檀家と云っています。

布施や財施はお寺やお坊さんにあげているのではありません

 表面的にはお布施をお坊さんに渡して、金品をあげている様に見えますが、ご本尊に捧げていると理解してください。お寺さんは受け取ったお布施で、ご本尊を守りお寺を維持して、法務(お寺の仕事全般)を司ります。また、お布施は、ご本尊を守るための活動をするお寺の住職やその家族の生活を助けるわけですから、間接的にご本尊を守るために使われていると考えてください。

お布施の価値と相場

 お布施の価値を考える時に、布施=読経料、戒名料など、対価として考えると世間の相場が気になってしまいますが、これまで記述してきたように、何かに対する対価としての費用ではないので、決まった金額はありません。あなたの経済的事情の範囲で無理のないお布施を包みましょう。たくさん包めば成仏できると云うものではなく、あなたの価値観で感謝の気持ちを表すことが大切です。

お布施の参考目安

 お布施は本来決まった額がないので、ここで紹介する金額も参考程度に留めておいてください。お寺さんとお付き合いがある場合は、直接尋ねられたほうが賢明でしょう。

通夜、葬儀・告別式でのお布施の金額

 通夜、葬儀・告別式にお寺さんの僧侶を呼んだ場合は、供養をして頂いた御礼としてお布施をお渡しします。大阪近郊の場合、およそ20万円前後で、全国的には約15万円~50万円の範囲で、地方によってそれなりの幅があるようです。(二日間のお葬式で戒名や読経をお願いした場合) 決まった菩提寺がなく、葬儀社などにお寺を紹介してもらった場合は、前もって、「お布施はこれくらいが多いですよ」と、お布施の目安を伝えられることもありますから、参考にすればよいでしょう。

法事・法要でのお布施の金額

法事・法要

金額

祥月命日法要

5,000円~1万円程度

四十九日法要

3万円~5万円程度

一周忌法要

3万円~5万円程度

三回忌法要以降

1万円~5万円程度

 法事法要では僧侶に、読経をあげて供養して頂いた御礼を込めて、お布施をお渡しすることが多いです。四十九日法要や一周忌法要と云った特に重要な法事法要の場合は、祥月命日法要の場合のお布施より、気持ちを込めて多めにお布施を包むことが多いようです。また、お寺の本堂ではなく、法要のために式場や自宅にお寺さんを呼ぶ場合は、お布施とは別に、お車代として5,000円~1万円をお渡しすることがあります。

納骨時のお布施の金額

 お墓や納骨堂に遺骨を納骨する納骨法要や納骨式の時には、1万円~5万円をお布施をして、読経・供養して頂きます。また、開眼供養(魂入れ)と合わせて回忌法要も行うことが多くなっています。

お墓の改葬時のお布施の金額

改葬

金額

閉眼供養・魂抜き

1万円~5万円

開眼供養・魂入れ

1万円~5万円

 菩提寺の墓地にお墓がある場合は、上記以外に「離檀料」が必要な場合もあります。これはお寺の方針によるもので、原則的に支払いが決まっているものではないので、お寺さんと相談してみてください。

お盆のお布施の金額

 お盆法要のお布施は5,000円~1万円程度でしょう。
 お盆の時期には菩提寺のお坊さんが檀家の家を回って、読経(棚経とも云います)をあげてもらい、その時、お布施を渡すことが多いです。故人が亡くなって初めて迎える新盆・初盆に、親戚も参列して盛大に初盆法要を執り行った場合は、お布施も3万円~5万円前後が目安となるでしょう。また、家に来て頂いた場合は、5,000円~1万円のお車代を用意し、食事会(お斎)に出席して頂いたり、別に食事代をお渡しすることもあります。

お彼岸のお布施の金額

 個別法要のお布施なら3万円~5万円、合同法要会では3,000円~1万円位でしょう。
 春・秋2回のお彼岸の時期に、お寺でお経をあげて供養して頂いた時にもお布施を渡します。

お布施の包み方と表書きについて

2種類のお布施の包み方

① 奉書紙にお布施を包む場合
 中包みとして、半紙でお札を包み、それを奉書紙で上包みします。または、中袋にお札を入れて、それを奉書紙で上包みするようにします。慶事の時の上包みの折り方と同じで、上側の折り返しに下側を被せます。お布施は不祝儀ではないので、弔事の折り方にする必要はないのです。奉書紙で包む作法はお布施の包み方としては、最も丁寧な形式になっています。因みに、奉書紙は表面がツルツルの方で、ざらついてる方が裏面になっています。

② 白封筒にお布施を入れる場合
 奉書紙が用意できない場合は、市販の白封筒で差し支えありませんが、郵便番号欄の枠が印刷されていない無地の封筒を選んでください。市販の封筒には、すでに「お布施」などと印字されているものもあります。その場合は、中袋なしで封筒に直にお札を入れても構わないことになっています。封筒の裏面には住所と金額を記載しておきましょう。

お布施に水引は必要か

 一般的には、お布施に水引は不要とされていますが、地域によって異なるようです。
 水引を使用する風習がある場合は、双銀や白黒の水引が一般的で、関西では黄色と白の水引を使用する処もあります。ただ、お布施はお寺に対して渡すもので、相手に不幸があったわけではないので、水引を付けないのが良いとされるので、特にその地域の風習が無ければ、水引は付けないでおきましょう。

お布施の表書きと書き方

 お布施を包む場合の表書きは薄墨ではなく、普通の黒墨で書いてください。一般的に「御布施」「お布施」と書き、または、何も書かずに空白でも構いません。中袋の裏面の左側に、住所・氏名、右側(または表面の中心)に金額を書きます。金額の頭には「金」と書き、金額の漢数字は旧字体を使うのが、より丁寧なマナーとされています。
 例えば、5万円は伍萬圓、10万円は壱拾萬圓、20万円は弐拾萬圓、30万円は参拾萬圓と云うように書きます。他に百→佰、千→阡、などがあります。

お布施のお札の入れ方

 1万円札を例にすると、封筒に入れる場合、福沢諭吉(表)側が最後まで見えるように入れてください。

お布施の渡し方・マナーのポイント

法事法要でお布施を渡すタイミング

 合同法要の場合は、お寺の本堂などの入り口に受付が用意されているでしょうから、お寺に入る際に、お布施を受付に渡せばよいでしょう。受付が無い場合は、法要の始まる前に僧侶に挨拶する時間があれば、ご挨拶を兼ねてお布施を渡すことが出来ますね。「本日は〇〇の〇回忌のため、どうぞ宜しくお願いします。」などと一言添えればよいでしょう。もし、法事法要の前が慌ただしくて、ゆっくり挨拶できない場合は、法事法要が終わって御礼の挨拶をする際にお布施を差し出せばよいでしょう。個別法要の場合も同じように、法事法要の前後の挨拶の時に一緒にお布施を渡せばよいでしょう。

葬儀でお布施を渡すタイミング

 葬儀の式が始まる前に、僧侶に挨拶する時にお布施を渡すのが一般的です。菩提寺で葬儀を行う場合でも、お寺の僧侶が到着すると葬儀社は控室に案内して、僧侶の到着を伝えてくれます。菩提寺との縁が深ければ、あなた自身が対応にあたることもあるでしょう。菩提寺ではなく、葬儀社にお寺の手配を頼んだ場合は、基本的に葬儀社が挨拶のタイミングを見計らって、顔合わせとなります。「本日は〇〇のために、お勤めを宜しくお願いします。」などの言葉を添えて、お布施を渡せばよいでしょう。また、会葬者の対応などで時間が取れず、挨拶のみに終わった場合は、お式が終わってからお布施を渡しても差し支えありません。

お布施を渡す場合のマナー

 お布施は袱紗(ふくさ)から取り出して渡すか、お盆の上にのせて渡すのが良いとされています。
① お盆(切手盆※)にのせる場合
※切手盆は祝儀盆とも呼ばれ、20~30㎝程度の縦長の四角い黒塗り盆で、弔事用には蓮柄などがあります。
お布施は直接手渡しするのではなく、お盆にのせて渡すのが、一般的作法とされています。お盆が無い場合は、葬儀社さんが用意できるかもしれませんので、相談してみてください。

② 袱紗にお布施を包む場合
お盆が用意できない場合は袱紗を使うことになります。包み方は弔事の包み方です。
ダイヤの形になるよう袱紗を広げ、真ん中より右側に封筒を置きます。右→下→上→左の順に封筒を包みます。僧侶に渡すときに袱紗を開き、袱紗から取り出して、袱紗の上にお布施をのせて、僧侶に渡すことになります。

③ 袱紗の色は?
弔事の場合、「紺、深緑、灰緑、緑、鴬色、灰青、グレー、紫」などシックな色が好ましいとされています。尚、紫色ならば慶事の際にも使えるので、この色の袱紗が1枚あれば便利です。袱紗は四角い形のものが一般的でしたが、金封タイプの金封袱紗や、爪や台が付いた爪付き袱紗、台付き袱紗なども普及してきました。

 いかがでしたか、
 お布施に決まった金額はないと云われても、やっぱり世間並みはと、考えてしまいますよね。相場に限らず、知識やマナーも心得て対応出来るよう、参考にしてみてください。

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