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各宗派別の葬儀の特徴-その②

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故人とのお別れに感謝を伝える心のこもったお葬式には、各宗派に沿ったしきたりがあります。ここでご紹介する各宗派の特徴を理解して、心からの“ありがとう”を伝えましょう。

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宗派別葬儀の特徴

浄土宗

浄土宗は鎌倉時代に法然上人によって開かれ、御本尊は阿弥陀如来となっています。総本山は知恩院(華頂山知恩教院大谷寺 京都市東山区)ですが、全国に七大本山があります。
・増上寺(東京都港区)・知恩寺(京都市左京区)・清浄華院(京都市上京区)・金戒光明寺(京都市左京区)・善導寺(福岡県久留米市)・光明寺(神奈川県鎌倉市)・善光寺大本願(長野県長野市)
「浄土三部経」を経典とし、「南無阿弥陀仏:なむあみだぶつ」と唱えます。「阿弥陀仏の救いを信じ、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば、必ず極楽浄土に往生できる」と云う教えです。

葬儀の特徴

故人に代わって、僧侶と共に参列者一同が念仏を唱える、「念仏一会(ねんぶついちえ)」がこの宗派の特徴です。「南無阿弥陀仏」を10回から一定時間唱えることで、故人が阿弥陀如来の救いを得る助けをすることになり、また、参列者と阿弥陀如来の縁を結ぶ意味合いもあります。
【下炬引導(あこいんどう)】
これは火葬時の点火を意味し、僧侶が棺の前に進んで焼香後、松明に見立てた法具を2本取って、そのうちの1本を捨てます。これは「厭離穢土(おんりえど:煩悩にまみれたこの世を嫌って、離れる)」を意味して、残りの1本の松明に見立てた法具で円を描き、「下炬の偈(あこのげ)」を読み上げ、終えると同時に法具を捨てます。これは「欣求浄土(ごんぐじょうど:極楽浄土に往生したいと心から願い、求める)」を表しています。

葬儀の流れ

【通夜】
 故人を北枕に寝かせて、顔に白い布、胸元に守り刀を置き、ろうそくと線香の火は通夜の間、絶やさぬように気を配ります。僧侶に枕経をあげていただきますが、本来は臨終間際に安心して最後を迎えられるよう行うものなので、通夜では行わない場合もあります。

【葬儀式】
① 奏請(ぶじょう):諸仏の入場を願います。
② 懺悔
③ 剃度作法・十念:頭を剃る仕草をして十念を唱えます。
④ 三帰三竟(さんきさんきょう):仏・法・僧に帰依することを故人に伝える儀式です。
⑤ 授与戒名
⑥ 開経偈(かいきょうげ)
⑦ 誦経(ずきょう)
⑧ 発願文(ほつがんもん):全ての衆生の救済に努めると誓います。
⑨ 摂益文(しゅうやくもん):念仏を唱えるものは仏に守られるという偈です。
⑩ 念仏一会(ねんぶついちえ):感謝の念仏を数多く唱えます。
⑪ 回向(えこう):念仏の功徳が全てのものの成仏に益することを願います。

【序文(じょぶん)】
葬儀に諸仏を迎え入れ讃歎する儀式です。

【正宗分(しょうじゅうぶん)】
引導を含む葬儀の中心部分で、「下炬引導」はこの中で行われます。

【流通分(るつうぶん)】
法要を終えたことに感謝し、諸仏と故人を送り出す儀式です。

葬儀における注意点・マナー

【焼香の作法】
浄土宗には焼香の回数に決まりはなく、地域により違いがあるようですが、3回が基本です。
香炉の前で合掌・一礼後、親指・人差し指・中指の3指で香を軽く一つまみして、その手を仰向けにします。香を持った手にもう片方の手を下から添えて、額に押しいただいて香炉の灰の中にくべ、最後に合掌・一礼します。

【香典の書き方】
香典の表書きは、「御霊前」または、「御香典」と書きます。お寺に納める謝礼には「御布施」と書き、「お経料」などの「〇〇料」という書き方は。商取引の支払いの意味合いをかもし出すので、避けてください。

浄土真宗

浄土真宗は浄土宗開祖、法然の弟子の親鸞聖人によって創始されました。親鸞の死後、分派されましたが、浄土真宗本願寺派(本山:本願寺。通称:西本願寺)と真宗大谷派(本山:真言本廟。通称:東本願寺)に大別されています。本尊は阿弥陀如来、経典は「浄土三部経」が読まれて「南無阿弥陀仏」と唱えます。お西・お東では唱える節が若干異なり、西:なんまんだーぶ(高音域の上り調子)、東:なんまんだぶ(低音域の下げ調子)と唱えます。浄土真宗の教えでは自力ではなく、本尊の阿弥陀如来の本願力(他力)により、念仏を唱えれば「即身成仏」するとされています。浄土真宗独自の作法以外に、本願寺派と大谷派でも、葬儀の作法や荘厳(飾り付け)、日常のおつとめで読まれる「正信念仏偈(しょうしんねんぶつげ)」の節回しなどに微妙な違いがあります。

葬儀の特徴

浄土真宗の葬儀が他宗派と大きく異なる点は、「死者への供養として行われるものではない」と云うことです。浄土真宗の考えでは、「死と同時に阿弥陀如来によって、極楽浄土に迎えられるから、成仏を祈る必要がない」となります。だから、礼拝の対象は死者でなく、阿弥陀如来となり、他の禅宗系にある「引導」や「授戒」はありません。

葬儀の流れ

【本願寺派】
・臨終では、末期の水を取らず故人を北枕に寝かせます。
・清掃、湯灌、エンバーミングなどの処理後、白服をかけ(死後直ぐ、極楽浄土に行けるので死装束は必要ありません)、顔に白布をかけます。通夜後の「線香の煙を一晩絶やさない」などの習わしはありません。
・納棺勤行後、葬儀になり、僧侶による読経、焼香に続き、ご遺族や参列者の焼香となります。
・葬儀後、出棺式が行われて、火葬・拾骨となり、その後は他宗派と同じように、回向・法要になります。直ぐに仏になる故人のためでなく、遺族の精進明け儀式の意味合いが強く、僧侶が勤行をあげて短念仏を唱えて儀式の終わりとなります。

【大谷派】
本願寺派と同じく、亡くなったら直ぐに極楽浄土に行って仏様になると云う教えなので、「冥福を祈る」「死出の旅路」といった概念はありませんから、守り刀や一膳飯のお供えなどは行いません。大谷派の葬儀は「葬儀式第一」「葬儀式第二」と2つの段階に分かれるのが特徴的です。
・葬儀式第一では、棺前勤行を行った後、葬儀勤行で導師による読経、焼香、その後、遺族や参列者の焼香となります。
・その後の葬儀式第二では仏間(又は葬儀式場)と火葬場で勤行を行っていましたが、現在では、地域の事情に合わせた形に、式次第が組み直されています。
・以降は、出棺式から回向・法要まで、本願寺派と同様になっています。

葬儀における作法・マナー

・焼香の作法:ご本尊の前で一礼し、お香を3本の指で摘まむのは一般と同じですが、本願寺派では、お香を額に押しいただかずに、そのまま1回だけ香炉にくべます。大谷派は同様に2回行います。
・香典袋の表書き:浄土真宗では亡くなって直ぐ仏様になるわけですから、本願寺派、大谷派共に「御霊前」ではなく「御仏前」と書きましょう。

真言宗

真言宗は平安時代に空海(弘法大師)によって開かれた仏教の一派で、「密教」を基盤とする独特な葬儀に特徴があります。
・故人を大日如来の支配する「密厳浄土(みつごんじょうど)」に送り届ける。
・今世で身についた悪い考えや習慣を落とす。
・灌頂(かんじょう):故人の頭に水を注ぎかけて、仏の位に登れると云う密教特有の儀式。
・土砂加持(どしゃかじ):光明真言を本尊の前で唱えて、洗い清めた土砂を火で焚き(護摩)、その護摩を遺体にかけて納棺します。滅罪生善(めつざいしょうぜん)と呼ばれるこの行為は苦悩を取り除き、体が柔軟になるとされます。

葬儀の流れ

① 塗香(ずこう)、三密観(さんみつかん)、護身法(ごしんほう)、加持香水(かじこうすい)の法を行います。
② 三礼(さんらい):三礼文を唱えて、仏・法・僧への礼拝を行います。
③ 表白(ひょうびゃく)・神分(じんぶん):大日如来をはじめとするいろんな仏や菩薩に感謝を捧げ、加護を願って、故人の滅罪を願います。
④ 声明(しょうみょう):仏典に節をつけた仏教音楽です。
⑤ 授戒作法:仏・法・僧への帰依を宣言し、剃髪、授戒、授戒名によって故人を帰依させます。
⑥ 引導の儀式:もう一度③の表白・神分を行います。不動灌頂・弥勒三種の印明を授けて、故人の即身成仏を果たします。
⑦ 墓前作法:破地獄の真言を与えて、故人の心の地獄を除き、法具の金剛杵を授けて、血脈(けちみゃく)の授与を行います。
⑧ 焼香~出棺:僧侶が諷誦文(ふじゅもん)を唱えている間に焼香を行います。焼香後は僧侶が導師最極秘印を結んで、3回指を鳴らした後、出棺となります。

焼香の作法

① 焼香台に進む。
② 香を額の高さまで押し頂いて、3回焼香を行う。
③ 合掌します。
※参列者が多い場合は、焼香を1回にするようお願いすることがあります。

香典の包み方

・香典の表書きは「御霊前」または「御香典」です。
・金額は一般的相場と変わりません。友人-5,000~1万円程度、勤務先関係者-5,000円
程度、身内の場合は年齢・間柄によって大きく変わりますが、1~10万円の間でしょう。
・表書きは水引の下中央に差出人名をフルネームで書きます。友人や同僚など複数人で香典を渡す場合は、「〇〇一同」などとし、中袋に其々の名前と漢数字で金額・住所を書いた明細を同封します。香典袋は袱紗に入れて持参するのがマナーとなっています。

数珠の使い方

真言宗では振分数珠(ふりわけじゅず)と呼ばれる、108個が連なった本連の数珠を使います。表裏に2本ずつの房が付いて、親玉から7個目、21個目に「四天」と云う小さな玉が付いています。茶系統や黒色、女性用では水晶が選ばれます。両手中指に数珠をかけ、手を合わせます。房は自然に下に垂らしておきます。尚、現代ではどの宗派にも使用できる略式の数珠があるので、真言宗信徒でない方が参列する場合は、これを使用しても良いでしょう。

葬儀費用の相場

仏式の葬儀費用で、宗派によって異なる点は、寺院に納めるお布施になります。普段のお寺さんとのお付き合いの度合いや戒名の位によって、金額に大きな幅があります。目安を知りたいなら、菩提寺のご住職にお尋ねするのがよいでしょう。また、お布施とは別に、お車代や、会食に僧侶が参加されない場合は御膳料などを配慮してください。5,000~2万円程度が目安となるでしょう。

カトリックの葬儀

同じ「キリスト教」でもカトリックとプロテスタントでは、その考え方には大きな違いがあります。カトリックは考え方の根本に「伝承と聖書を、共に神の啓示として考える」と云う姿勢です。カトリックの頂点であるローマ教皇の言葉を重んじるのは、彼の言葉が「神の啓示」と同じと考えるからです。カトリックでは神の許しを得るために、洗礼や聖体拝領、油を使うなどいくつかの秘跡(ひせき:神からの許しを得るために行う儀式)を必要とします。葬儀においても、カトリックでは宗教者を「神父」と呼び、葬儀では油を使った秘跡や聖体の拝領、臨終の祈りなどが必要となります。

葬儀の流れ

① 終油の秘跡(塗油の秘跡)・聖体拝領・臨終の祈り
カトリックでは、大切な家族が危篤に陥った時点で神父を呼ぶ、つまり臨終前から宗教者に立ち会ってもらうことになります。先ず、今までの人生の罪の許しを乞う秘跡として、安らかな旅立ちを願い、額などに「病人に対して行う塗油の行為」を行います。次いで、キリストの最後の晩餐を由来とする、パンとワインを与える「聖体拝領」を行います。その後、神父により臨終の祈りがささげられます。
② 納棺式
カトリックでは特にこれと云ったやり方が定められていませんが、現在では慣習として、ご遺体に白い布をかけて棺に入っていただきます。棺の中を生け花で一杯に埋め尽くして、大切な人を見送ります。
③ 通夜の集い
カトリックに特に定めはなく、現在では故人の思い出を語り合い、神父と共に歌を歌い、聖書を朗読する処が多いようです。
④ 葬儀・告別式
葬儀は、入堂聖歌・開式の辞・葬儀のミサ(※)の流れで行われ、告別式では、入堂聖歌・聖歌斉唱・弔辞・弔電紹介・献花・遺族の挨拶が行われます。
※【葬儀のミサ】:「言葉の典礼」として神父が説教と聖書の朗読を行い、「感謝の典礼」では聖体拝領として、ご遺族がパンとワインを捧げて、神父が参列者に配ります。

⑤ 出棺式
白い布をめくって、最後の別れを告げて、献花をします。
-1.両手で花を受け取り、右手は手のひらを上に、左手は下にします。
-2.祭壇に一礼します。
-3.花を回し、茎のほうを祭壇側に向けて献花台に置きます。
-4.黙とう(手を合わせる)、又は一礼して、さらに遺族へ一礼して席に戻ります。 

⑥ 火葬
キリスト教では「土葬」が基本ですが、日本では火葬が主流になっています。棺の蓋の上に花(十字架を置くこともあります)を置き、参列者と神父の最後の祈りに見送られて、火葬されます。骨壺に収集後、桐箱の覆いは黒色で十字架の付いたものを利用することが多いようです。

⑦ 葬儀後
ご逝去後3日目・7日目・30日目に追悼ミサを行い、「召天記念日(亡くなって1ヶ月後)」に合わせて埋葬するケースが多くなっています。その後の追悼ミサは毎年命日に行います。

カトリック葬儀の注意点

カトリック葬儀では「お布施」と云う表現は使わず、教会に寄進と云う意味で「献金」としてお渡しするのが一般的です。遺影に関しては、「絶対ダメ!」と云うわけではありませんが、目立つ処に飾ることはできません。また、供花も受け付けないので注意してください。

カトリックの葬儀料金相場

葬儀料金の相場は内容や自宅・協会・セレモニーホールなどの場所にもよりますが、一般的なお見送りでは総額100万円ぐらいが目安となります。見積もりの際に教会の使用料やお花代などまで、必要なものを明確にして総額を算定する必要があるでしょう。

プロテスタントの葬儀

「キリスト教」にはカトリックとプロテスタントの2種類がありますが、プロテスタントでは、キリスト教の信仰者でなくても、故人ではなく神に祈りを捧げて、遺族を慰めると云う考え方なので、希望次第で基本的な式に沿いながら、葬儀には柔軟に対応してくれることがあります。仏式の通夜に相当するのが前夜式で、焼香ではなく献花が中心となる儀式です。尚、宗教者をカトリックでは神父と呼ぶのに対し、プロテスタントでは牧師と呼びます。また、カトリックでの聖歌をプロテスタントでは讃美歌と呼びます。

プロテスタントの葬儀の流れ(危篤~納骨)

① 危篤・臨終「聖餐式(せいさんしき)」
臨終前に牧師を呼び、牧師は病人にパンとワインを与え、家族と共に祈りを捧げます。臨終後は、ガーゼや脱脂綿に含ませた水で故人の唇を濡らす「死水を取る」儀式を行います。
② 納棺式
短い祈りの後、牧師立ち合いで、遺族たちの手でご遺体を棺に納めます。納棺後は白い布で覆い、白い花で飾って蓋をして、黒い布で覆います。棺の枕元に白や黒の布を覆った小机を置いて、十字架・ろうそく・遺影と共に白い花を飾ります。聖書の朗読・祈りの後、牧師が納棺の辞を述べ、讃美歌の合掌を行って、もう一度最後に祈りを捧げます。
③ 前夜式
仏式の通夜にあたる儀式で、牧師を呼び、讃美歌の斉唱・聖書の朗読・祈り・説教・感話(故人を偲ぶ話)の流れになります。式の最後に、牧師・喪主・遺族・親類・参列者の順に献花します。
④ 葬儀告別式
開式・聖書朗読・祈祷・讃美歌斉唱・牧師による説教・弔辞弔電・祈祷、オルガン演奏・出棺の祈り、献花・出棺の流れになります。尚、参列者多数の場合は、献花を黙とうに変えることがあります。
⑤ 火葬
火葬場到着後、棺の上を花や十字架で装飾し、牧師が聖書朗読して祈りを捧げます(火葬式)。その後、讃美歌を斉唱し、火葬します。骨上げは仏式と同様ですが、必ずしも二人一組で行うことはありません。
⑥ 会食など
仏式の精進落としの会席のように、プロテスタントでも故人を偲ぶ、食事の席を設ける場合が多いです。

プロテスタントの葬儀料金相場

一般的な葬儀の全国平均額は195.7万円ですが、プロテスタント式の葬儀では、それほどまでにかかることは少ないです。ただ、参列者の多寡や家族葬・一般葬、装飾スタイルによって価格は変わります。

プロテスタントの葬儀参列でのマナー、注意点

・讃美歌の参加:普段あまり歌うことはないでしょうが、歌詞カードを見ながらでも、積極的に参加しましょう。
・お悔やみの言葉を言わない:プロテスタントでは、「死ぬことは神のもとへ行く」と云う考え方なので、お悔やみの言葉は不要で、前向きな雰囲気で葬儀が行われます。
・献花:花の部分が右手に来るよう両手で花を受け取り、時計回りに回して茎の根元側を祭壇に向けて、献花台に置きます。
・香典:「御花料」と書かれた不祝儀袋を用意します。

いかがでしたか、宗派に沿った作法やマナーも大事ですが、心からの哀悼の気持ちを持って、見送ることが一番でしょう。
是非、参考にしてみてください。

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