近しい人の急な逝去による不意の出費は、遺された遺族にとっても大きな負担になるものです。そんな時、故人が遺された生命保険などは大変ありがたいものですが、それ以外に行政からも支給されるお金もあります。ここでは、遺族が申請・請求することで受給できる手続きをまとめてみました。
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3つの手続きの種類
人が亡くなった場合に必要な手続きは大きく分けて、A-返還・解約、B-名義変更、C-受給申請の3つとなり、其々遺族が申請・請求して支給される金額は少なくありません。
返還・解約・名義変更手続き
まず「死亡届」を役所に提出し、それ以外にも多くの手続きが必要となりますが、面倒がらずに確実に行いましょう。国民健康保険や年金の受給停止手続きなどを行うことで、「埋葬料」や「遺族給付」などの支給を受けることが出来るからです。故人が世帯主だった場合、名義変更などの手続きがさらに増える訳ですから、見落としの無いよう手続きを進めましょう。
申請期限別手続き
速やかに行うべき手続き-1 |
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内容 |
身体障害者手帳の返還 |
後期高齢者医療被保険者証の返還 |
窓口 |
市区町村役場 |
市区町村役場 |
備考 |
返還届、印鑑と手帳を持参 |
故人75歳以上の場合 |
速やかに行うべき手続き-2 |
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内容 |
運転免許証の返還 |
クレジットカードの解約手続き |
窓口 |
警察/公安委員会 |
各カード会社 |
備考 |
- |
- |
速やかに行うべき手続き-3 |
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内容 |
パスポートの返還無効手続き |
携帯電話の解約 |
窓口 |
都道府県旅券課 |
各携帯電話会社 |
備考 |
- |
- |
死後14日以内と定められているもの |
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内容 |
介護保険資格喪失届。介護保険証の返還 |
国民年金の受給停止手続き |
窓口 |
市区町村役場 |
市区町村役場、社会保険事務所 |
備考 |
故人が65歳以上の第1号被保険者、また40歳以上65歳未満の第2号被保険者のうち、国の定める特定疾病により要介護認定を受けていた場合 |
故人が年金受給者である場合。 年金手帳、死亡診断書、戸籍謄本が必要 |
期限が定まっていないもの |
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内容 |
国民健康保険資格喪失届。保険証の返還 |
窓口 |
市区町村役場 |
備考 |
死亡を証明する書類や印鑑、納付通知書などが必要な場合や、マイナンバー制度により個人番号確認書類が必要なケースも考えられ、前もって各自治体に問い合わせ、確認する方が良いでしょう |
受給申請手続き
遺族が申請、請求すれば受給できる手続きの一覧です。受給資格には其々条件があり、申請の期限も設けられ、長いものになると申請期限が「死亡後5年以内」といったものもありますが、出来れば早めに手続きを完了した方がよいでしょう。
期限が定まっていない請求・申請手続き |
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内容 |
中高齢寡婦加算金給付の請求 |
未支給失業給付金の請求 |
窓口 |
- |
公共職業安定所 |
備考 |
- |
- |
故人の死後2年以内に必要な請求・申請手続き-1 |
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内容 |
国民健康保険の葬祭費支給申請 |
勤務先の健康保険による埋葬料請求 |
窓口 |
市区町村役場 |
健康保険組合、社会保険事務所 |
備考 |
故人が被保険者の場合 |
故人が加入していた場合。家族死亡の場合も埋葬料の請求可能な場合があります |
※葬祭費支給申請書、故人の健康保険証、故人の戸籍謄本、死亡診断書、葬儀費用の領収書(宛名が申請者名、内訳が葬儀代金となっていること)、申請人(喪主)の身分証明書(マイナンバーカードなど)、申請人(喪主)の印鑑、入金先の口座番号などが一般的に必要となります。1万円~7万円程支給されます。
故人の死後2年以内に必要な請求・申請手続き-2 |
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内容 |
国民年金による死亡一時金給付請求 |
窓口 |
市区町村役場、社会保険事務所 |
備考 |
遺族基礎年金、寡婦年金のいずれも受けられない場合 |
故人の死後3年以内に必要な請求・申請手続き |
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内容 |
生命保険の死亡保険金請求 |
窓口 |
加入生命保険会社 |
備考 |
故人が加入していた場合 |
※保険会社所定の請求書、保険会社所定の診断書・証明書、死亡診断書(死体検案書)、住民票(被保険者の死亡事実が記載のもの)、保険証券が一般的に必要です。他に、死亡保険金受取人の戸籍謄本(全部事項証明書)や本人確認書類が必要な場合もあります。死亡原因が交通事故の場合は交通事故証明書(自動車安全運転センターで取得)が必要になります。
故人の死後5年以内に必要な請求・申請手続き-1 |
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内容 |
国民年金の遺族基礎年金給付請求 |
国民年金の寡婦年金給付請求 |
窓口 |
市区町村役場、社会保険事務所 |
市区町村役場、社会保険事務所 |
備考 |
故人が国民年金のみに加入していた場合 |
故人である夫が国民年金のみに加入していた場合 ※条件=妻が「結婚10年以上かつ60歳以上」であること |
故人の死後5年以内に必要な請求・申請手続き-2 |
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内容 |
国民(共済)年金の遺族厚生年金給付請求 |
かんぽ生命の保険金請求 |
窓口 |
社会保険事務所 |
郵便局 |
備考 |
- |
故人が加入していた場合 |
未支給年金も忘れずに
給付金ではありませんが、年金受給者が亡くなった場合、「まだ受け取っていない年金(未支給年金)」を受け取れる場合があります。偶数付きの15日前後に2ヶ月分まとめて支給されることになっています。例えば、4・5月分は6月15日前後に支給されますので、仮に5月10日に亡くなっていた場合は、4・5月分が未支給状態なので、未支給年金として受け取れる可能性があります。未支給年金を受け取れる方は、年金受給者(故人)と生計を同じくしていた遺族の方です。受け取る権利の順位は、1-配偶者、2-子ども、3-父母、4-孫、5-祖父母、6-兄弟姉妹、7-その他3親等内の親族(甥、姪、子の配偶者、叔父、叔母、曽孫、曾祖父母など)となっています。詳しくは、年金事務所や年金相談センターに問い合わせてください。
会社からの弔慰金
社員やその家族が亡くなった場合、勤務先の会社や親睦会から弔慰金(家族弔慰金)が支給される場合もあります。ただこれは、会社の規定によって異なり、金額も異なります。健康保険制度とは違って、弔慰金は会社の義務ではないので、そもそも弔慰金自体が無い場合もあります。
遺族に支給されるお金(国保/国民年金)
後に残される遺族のことを考えて、生命保険に加入している方も多いことでしょう。でも、たとえ生命保険に加入していなくても、国保や国民年金などの公的保険や公的年金からも、遺族に対して、金額は限られていますが、残された遺族の生活の一助にはなると思います。
国保・国民年金で支払われるお金のポイント
・国保/国民年金をしっかり支払っていた場合、「葬祭費」と「死亡一時金」合計で、17万円くらいの一時金が出ます。
・18歳未満の子どもがいた場合、「遺族基礎年金」が出ます。18歳未満の子どもが1人いる家族なら年額100万円くらいにはなるでしょう。
・「寡婦年金」は「60歳から65歳までの妻」に限られた年金で、年額58万円くらいを上限として支給されます。
・国民健康保険からの「葬祭費」
自営業者などが加入する国民健康保険(国保)で、被保険者が亡くなった葬儀代の補助として葬祭費が支給されますが、市区町村によって金額が異なり、大都市圏ではだいたい3~7万円くらいです。ちなみに東京23区内では7万円ですが、八王子や多摩市は5万円です。
自治体 |
金額 |
札幌市 |
3万円 |
東京23区 |
7万円 |
名古屋市(愛知) |
5万円 |
大阪市 |
5万円 |
福岡市 |
5万円 |
※葬祭費は「葬祭」にかかった実費を補助するためのお金ですので、いわゆる「直葬」だと「火葬だけで、葬祭ではない」と判断されて葬祭費が出ない場合もあります。
※「直葬」とは火葬式ともいわれ、通夜や告別式を行わず、火葬だけのお葬式のことです。
後期高齢者医療制度加入者が亡くなった場合にも葬祭費
後期高齢者医療制度(75歳以上、または65歳から74歳で一定の障害がある方)に加入した方が亡くなった場合、自治体から葬祭費が支給されます。
申請は葬儀後2年以内、役所の後期高齢者医療担当部署で手続きを行ってください。
【必要書類】例:東京23区
死亡者の保険証 |
葬儀代金の領収書 |
葬儀代金を支払った方(領収書の名義人)の印鑑 |
葬儀代金を支払った方の銀行口座番号が判るもの |
社会保険から埋葬料・家族埋葬料
会社員などが加入する社会保険では、被保険者本人が亡くなった場合、葬儀を行ったかどうかに関係なく、「被保険者に生計を維持してもらっていた方」に埋葬料が、被扶養者が亡くなった場合は、被保険者に家族埋葬料が支給されます。中小企業が扱う協会けんぽでは埋葬料・家族埋葬料ともに5万円支給されます。ただ、会社独自の組合保険の場合は、上乗せなどで金額が変わることもあります。協会けんぽの公式サイトから申請書をダウンロードしてください。
「被保険者に生計を維持してもらっていた方」がいない場合は、実際に埋葬・葬儀を行った方に「埋葬費」が支給されます。埋葬費は埋葬料と異なり、埋葬・葬儀を実際に行ったことが条件になるので、葬儀の領収書や費用明細書が必要になります。
【埋葬で経費と認められ費用】
霊柩車代 |
霊柩運搬代 |
霊前供物大 |
火葬料 |
お寺さんへの謝礼 |
遺族年金
家計を支えていた方(夫)が亡くなった場合、その配偶者(妻)には遺族年金や寡婦年金が支給されますが、夫が保険料をしっかり納めていたことが前提です。未納期間が長いと、支給されないこともあるので、万一に備えて保険料はきちんと納めましょう。
国民年金の場合
支給される年金(期間) |
条件 |
遺族基礎年金(子供が18歳になるまで) |
18歳までの子どもがいる |
寡婦年金(妻が60歳から64歳まで) |
・夫が第1号被保険者として25年以上保険料納付(免除期間含む) ・10年以上継続して結婚 ・夫により生計が維持されていた |
厚生年金の場合
支給される年金(期間) |
条件 |
遺族基礎年金+遺族厚生年金(子供が18歳になる年度末まで) |
18歳以下の子どもがいる(1) |
遺族厚生年金+中高齢寡婦加算(妻が65歳になるまで) |
・夫が死亡時に妻が40歳以上(2) ・18歳以下の子どもなし(2) |
遺族厚生年金 |
(1)(2)以外 |
支給金額
遺族基礎年金 |
年額780,100円+子どもの数により加算 子ども2人まで各224,500円 子ども3人目から各74,800円 |
寡婦年金 |
夫が受け取れたはずの老齢年金の4分の3 |
遺族厚生年金 |
(平均標準報酬月額が35万円の場合) 年額561,106円 |
中高齢寡婦加算 |
年額585,100円 |
【遺族厚生年金の計算式】例:平均給与額35万円
(平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの被保険者期間(月数)+平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月からの被保険者期間(月数))×3/4
再婚、事実婚でも遺族年金受給はストップ
遺族年金を受け取っていた妻が再婚すると、その時点から受給資格を失います。籍の有る無しに関係なく、事実婚状態で同棲しているなど、新しいパートナーと生計が同一と見なされると受給資格を失います。できるだけ早く日本年金機構に「遺族年金失権届」を提出してください。ただし、これによって妻が受給資格を失っても、子どもが受給要件を満たしていれば、子どもは年金を受給できますので、確認しましょう。
死亡一時金
自営業者の妻で、18歳以下の子どもがいない場合は、条件を満たせば寡婦年金が受け取れるのですが、夫が保険料支払い期間の条件をみたしていないと、寡婦年金は貰えません。でも、以下の条件に当てはまれば死亡一時金が受け取れます。
死亡一時金の受給条件
- 夫が国民年金の第1号被保険者として保険料を36ヵ月以上、納付のこと。
- 夫が老齢基礎年金・障害基礎年金を受けずに亡くなった場合。
- 妻は夫と生計を同じくしていたこと。
※死亡一時金は、年金形式ではなく受給は1回のみで、金額は保険料期間によって異なります。
※寡婦年金と死亡一時金の両方の受給資格が満たされている場合は、どちらかを選択することが出来ます。
※一般的に保険料をきちんと支払っていれば、寡婦年金の方が断然多いのですが、寡婦年金の支給されない条件として、「夫の死亡時に、妻が老齢基礎年金の繰り上げ受給を受けていた場合」があるので、その時は死亡一時金が支給されます。
保険料納付期間 |
死亡一時金の金額 |
36~180ヶ月未満 |
12万円 |
180~240ヶ月未満 |
14万5千円 |
240~300ヶ月未満 |
17万円 |
300~360ヶ月未満 |
22万円 |
360~420ヶ月未満 |
27万円 |
420ヶ月以上 |
32万円 |
どの年金があなたに適しているのか判断できない場合は年金手帳を持って、年金事務所か年金相談センターに行って聞いてみてください。
ひとり親家庭には児童扶養手当
児童扶養手当は、18歳以下の子どもを育てる母子家庭・父子家庭に支給されます。以前は遺族年金などの公的年金が受給できる場合は、児童扶養手当を支給されませんでした。でも、2014年12月から児童扶養手当の額が年金額を上回ると、その差額分が支給されるようになりました。
子ども |
全部支給 |
一部支給 |
1人目 |
42,330円 |
42,320~9,990円 |
2人目(加算) |
10,000円 |
9,990~5,000円 |
3人目以降(加算) |
6,000円 |
5,990~3,000円 |
親の所得に応じて支給額は変わり、前年所得が19万円未満の場合、全部支給されます。一部支給の所得制限の限度額は192万円で、それ以上の場合、児童扶養手当は支給されません。
※自治体によっては、ひとり親世帯への経済支援として、児童扶養手当に追加手当が支給されます。
例:愛知県遺児手当。ひとり親家庭手当(名古屋市)。民間賃貸住宅家賃補助(武蔵野市)。
未支給失業等給付の代わり受給
失業保険を受給中家族が亡くなった場合、亡くなる前日までの未支給失業手当は遺族が代わりに受け取ることが出来ます。職業訓練給付金や育児休業給付金など、失業保険以外の雇用保険から給付を受けていた方が亡くなった場合も同じです。亡くなった方と生計を同じくしていたことが条件で、条件を満たす複数の遺族には優先順位(配偶者、子ども、親、孫、祖父母、兄弟姉妹)があります。
故人の死後6ヵ月以内に必要な請求・申請手続き |
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内容 |
未支給失業等給付の請求 |
窓口 |
ハロ-ワーク |
必要書類 |
未支給失業等給付請求書。受給資格者証。死亡診断書。戸籍謄本。 住民票謄本。失業認定申告書(本人が生前に提出済の場合は不要) |
高額療養費の返金制度
高額療養費制度は社保・国保に関係なく、健康保険に加入していれば適用され、1ヶ月の医療費自己負担額の上限を定めたものです。例えば、70歳未満で年収370万円以下なら、1ヶ月の医療費上限は57,600円、住民税非課税の場合は、35,400円と決められています。
70歳以上の場合は、一般所得者(窓口負担1割、住民税非課税ではない方)なら通院(外来)の自己負担額は1ヶ月12,000円が上限となります。
さらに、外来(個人ごと)の限度額以下の部分と入院費用を世帯で合計した場合、44,400円が1ヶ月の上限となります。
これら1ヶ月上限額を超えた医療費は、払い過ぎとして請求すれば返金してもらえます。
故人の死後2年以内に必要な請求・申請手続き |
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内容 |
高額療養費制度の払い戻し請求 |
窓口 |
社保―会社の健康保険担当部署、または協会けんぽ窓口 国保、後期高齢者医療制度加入の場合―市区町村 |
必要書類 |
※医療費が高額になった月の2ヶ月後くらいに市の担当部署より通知が来るはずです。 高額療養費支給申請書。病院の領収書。保険証(被保険者証)。印鑑。申請人の銀行口座が確認できるもの。故人との関係が確認できる戸籍謄本など。 |
いかがでしたか?
家族が亡くなった場合、自治体や国などの公的制度から支給されるお金は、意外と種類が多く、どれが自分に該当するのか迷うものですね。
必要に応じて、会社や役所の担当部署に問い合わせてみてください。